こんにちは。
愛され続けるお店づくりをサポートする税理士の酒井麻子です。

わからないことはその道のプロに聞け!疑問や問題が起こる前に経営者なら知っておきたい話。会社の安全を守るため、専門家の方々から事前に学ばせて頂きます。

弁護士 高井翔吾先生の「転ばぬ先の杖」ビジネスルールを身に付けよう。
最終回は「人を雇うときのルール。最低限これだけは押さえておこう!」をお届けします。

 

人を雇おう!

起業をされて、ビジネスも順調、仕事が追いつかなくなってきた・・・。
このようなときに、皆さまがご検討されるのが「人を雇おう!」ということだと思います。

しかし、人を雇う場合には、「労働法」というルールに従う必要があります。今回は、採用から退職までの流れの中で、ここだけは押さえてほしい労働法のポイントをお伝えします!

 

採用のとき

新たに人を雇う場合、「この人を採用したい!」という方が見つかったとします。
このとき、「じゃあ明日から来てください!」という前にするべきことがあります。それは「労働条件をしっかり示すこと」です。

人を雇う時、雇う側(法律上は「使用者」といいます。)は、雇われる側(同じく「労働者」といいます。)に対して、賃金、労働時間などの労働条件を、書面に記載して交付しなければなりません。

 

働いてもらっているとき

原則として、労働時間は、1日につき8時間(1週間につき40時間)までと決められています。なお、労働時間に応じて少なくとも45分から1時間の休憩、1週間につき1日の休日をあげなければいけません。

また、決められた届出を労働基準監督署に行えば、1日8時間を超えて残業してもらうこともできますが、その場合は「残業代」を支払う必要があります。

 

残業代払ってもらえるの?

この残業代、よくあるご相談としては以下のものがあります(なお、私は使用者側・労働者側いずれのご依頼もお受けしていますが、今回の依頼者様は労働者側です。)。

依頼者様
「入社する時、社長から『ウチは残業代払わないけど、それでいいか』と言われて、嫌だったけどしぶしぶ納得しました。残業代を払わないという内容の契約書にもサインしました。やっぱり残業代はもらえないんですか?」

 

さあ、どうでしょうか?答えは・・・

 

高井
「残業されたのであれば、残業代はもらえます!会社との合意は無効です。契約書があっても関係ありません。」

です。

契約書があるのに意外・・・と思われる方も多いのですが、労働法は「労働者を保護しましょう」ということを目的とした法律なので、これに反する合意は無効となるのです。

このことを使用者側から見ると、残業代の支払を抑える方法は、「残業をさせない」ことに尽きる、ということです。

 

退職のとき

いろいろな理由で、使用者が労働者に辞めてもらいたいとき、使用者には「解雇」という方法があります。

解雇が有効に認められるには、おおまかに言うと

① 解雇する理由が客観的・合理的である
② 社会常識的にも「これは解雇されても仕方ない」と評価できる

ことの両方が必要になりますが、日本の労働法は、上に書いたように「労働者を保護しましょう」という考え方が強いため、裁判所はなかなか解雇を認めません。なので、まずは労働者との合意によって円満に退職してもらう方法を検討するのが良いでしょう。

一方、労働者の側から辞めることは原則として自由であり、解雇の場合のような制限はありません。

 

コミュニケーションが大切!

その他、今回は触れられなかったセクハラやパワハラなど、労働に関しては色々な問題が起こりえますが、使用者側と労働者側のコミュニケーションが何より大切です。コミュニケーションさえとれていれば法的トラブルにまで発展しなかったのに・・・と思えるケースは多いです。

揉め事など起こらないに越したことはないので、何よりもまず、労使双方がよく話し合える環境作りを心がけましょう!

 

プロフィール

 

高井翔吾先生

弁護士 高井翔吾
(東京弁護士会、池田・高井法律事務所)

【 経 歴 】

東京大学法学部、東京大学大学院法学政治学研究科を卒業後、アンダーソン・毛利・友常法律事務所にて企業法務全般を取り扱う。独立後は、契約書のチェック・作成、取引先との交渉代理、紛争対応など、ビジネスに伴う各種法的トラブルをトータルにサポートしている。

モットーは「事前の一策、事後の百策に勝る」。法的トラブルをそもそも生じさせないこと、不幸にも生じてしまったトラブルについては依頼者の利益のために妥協せずに戦うこと、を心掛けている。

【 趣 味 】

ジョギング後にビールを飲むこと(アサヒスーパードライが好み)。

【 論 文 】

「嘱託先が正当な理由なく調査嘱託への回答を拒絶した場合に、訴訟当事者に対する不法行為の成立が否定された事例(東京高判平24.10.24)」(ビジネス法務 2013年5月号)

【 会務活動等 】

日弁連交通事故相談センター東京支部 東京都26市役所(府中)交通事故相談担当弁護士
東京弁護士会 骨髄等提供最終同意立会弁護士