こんにちは。
愛され続けるお店づくりをサポートする税理士の酒井麻子です。

わからないことはその道のプロに聞け!疑問や問題が起こる前に経営者なら知っておきたい話。会社の安全を守るため、専門家の方々から事前に学ばせて頂きます。

弁護士 高井翔吾先生の 「転ばぬ先の杖」ビジネスルールを身に付けよう。

 

第3回は「突然訴状が届いたら・・・放っておくと大変なことに!」をお届けします。

 

突然、訴えられてしまったら?

前回、「相手が代金を支払ってくれない場合」の対処法として、「訴訟」という方法があることをご紹介しました。
これは、ご自身が「原告」(訴えた人)となって、「被告」(訴えられた人)に対して、裁判所でいろいろな請求をするという手続です。では、仮にご自身が「原告」ではなく「被告」となってしまった場合、どうしたらよいのでしょうか?

実は、ビジネスの世界ではそうしたことも決して珍しくはありません。そのような場合に備えて、対応のポイントを知っておきましょう。

 

「被告」と「被告人」の違い

まず、「被告」という響き、マイナスのイメージはありませんか?テレビや新聞などで毎日のように「高井被告に懲役〇年の判決が言い渡されました」みたいな報道があるのが原因かもしれません。
しかし、こうした報道でいう「被告」は正確には「被告人」のことであり、「刑事事件」(犯罪に関する裁判)の話です。
一方、今回ご紹介する「被告」は「民事事件」(ビジネスや取引に関する裁判)の話であり、「訴えられた人」という以上の意味はありません。

つまり、全く根拠のない訴えであっても、訴えられた人は「被告」と呼ばれる、ただそれだけのことで、マイナスのイメージは単なる誤解です。「被告」≠「被告人」とだけ覚えておいていただければOKですので、ご参考まで。

 

訴状が届いたら

さて、民事事件の「被告」となる場合、まずは、オフィスなどに「訴状」(原告が請求の内容を書いた書面)が届くところから始まります。

「訴状」の内容が事実であれば、相手の請求に沿った対応(お金を払えという請求であれば、減額を求める、など)を考える必要があります。
一方、「訴状」の記載が全くのデタラメということもありえます。例えば、原告からお金を借りたことなど一切ないのに、「貸したお金1000万円を返せ。利息も払え。」といった内容だった場合です。
この場合、デタラメだからといって、何もしないで放っておいて大丈夫でしょうか?

 

放っておくと・・・

答えはNOです。

どんなにデタラメな訴状であっても、裁判所にこちらの言い分を伝えず、裁判所への出頭もしないと、法律上、裁判所は「反論がない以上、原告の主張が正しい」という判決を出してしまいます。こうなってしまうと、原告の主張がどんなにデタラメ・嘘であっても、上の例の場合、被告は1000万円と利息を払わなければいけなくなります。

・・・とんでもない話ですね。

しかし、これは絵空事ではなく、こうした裁判のルールを悪用する形の詐欺事件は実際に起こっています。

 

対処法

もし裁判所から訴状などの書類が届いた場合、

① まずは、それが本当に裁判所からのものかを確認しましょう。
悪質な業者が裁判所を装い、虚偽の連絡先を記載している場合もあります。
その場合、こちらから連絡してしまうと、電話番号等の個人情報を知られてしまいかねないので、連絡先が本当の裁判所であるかどうか、最高裁判所のホームページ等で確認しましょう。

② 本当に裁判所からの連絡であれば、無視すると大変なことになりかねないので、裁判所の指示に従いましょう。場合によっては、早期に専門家に相談する等の対応を取りましょう。

結局、もし相手方に訴えられてしまったら、どんな内容であっても無視はできない、ということです。ただし、相手の請求が全くのデタラメであれば、それを理由に相手に対して損害賠償請求をすることも考えられます。

いずれにしても、対応を誤ると取り返しの付かないことになりかねないので、どうぞご注意を!!

 

次回は11月12日
「人を雇うときのルール。最低限これだけはおさえよう」をお届けします。

 

第1回 口約束でも契約になる?知らないと怖い「契約」の意味

第2回 取引先が代金を払ってくれない!代金回収のテクニック

第4回 人を雇うときのルール、最低限これだけは押さえておこう!

 

プロフィール

高井翔吾先生

弁護士 高井翔吾
(東京弁護士会、池田・高井法律事務所)

【 経 歴 】

東京大学法学部、東京大学大学院法学政治学研究科を卒業後、アンダーソン・毛利・友常法律事務所にて企業法務全般を取り扱う。独立後は、契約書のチェック・作成、取引先との交渉代理、紛争対応など、ビジネスに伴う各種法的トラブルをトータルにサポートしている。
モットーは「事前の一策、事後の百策に勝る」。法的トラブルをそもそも生じさせないこと、不幸にも生じてしまったトラブルについては依頼者の利益のために妥協せずに戦うこと、を心掛けている。

【 趣 味 】

ジョギング後にビールを飲むこと(アサヒスーパードライが好み)。

【 論 文 】

「嘱託先が正当な理由なく調査嘱託への回答を拒絶した場合に、訴訟当事者に対する不法行為の成立が否定された事例(東京高判平24.10.24)」(ビジネス法務 2013年5月号)

【 会務活動等 】

日弁連交通事故相談センター東京支部 東京都26市役所(府中)交通事故相談担当弁護士
東京弁護士会 骨髄等提供最終同意立会弁護士

【 ホームページ 】

http://www.i-t-laws.com